第七章 悩み


 大阪に転勤になる前は東京本社勤務だったので、都内の地理は判る。課長研修は新宿の研修センターで月曜から金曜までの一週間だが、前後の土、日はどうにでも出来た。
 僕はひめ宛のメールに研修のスケジュールを書いて発信した。 


(グラタン)ノートの調子が悪い、落ちるかも・・
(もず)グラタンさんだいじょぶ?
(まる)グラタンさま〜
(ひめ)みなさん、おはようございます。
(まる)あれれ? うわさの ひめさま?
(もず)やほう!!(^‐^)ノ>ひめサン
(グラタン)σ(・_・)の片想いの相手(爆笑)>まるサン
(まる)ひめが?>グラタン
(グラタン)うん(笑)>まるサン
(まる)片想いって、あんた(^。^;)妻子は>グラタン
(ひめ)そうですよ。グラタンさん
(グラタン)チャットのね、現実とは別さ(笑)>まるサン
(まる)そうかぁ、あたしも・・・・・だったけどさ〜>グラタン
(もず)ほうほう、よく変わりません?片想いの相手?(爆)>グラタンサン
(グラタン)(。_゚)ドテリンコ!>もずサン
(まる)ぬふふふふ(*^ー^*)>グラタン


 チャット室にはオープンとアベックの二種類がある。まだひめと利用した事はないが、プライベートな話はオープンで出来ない。


(グラタン)ごめん、ひめを口説きたいけどアベックモードにしていい?>ALL
(もず)どーぞどーぞ!(爆笑!)>グラタンサン
(グラタン)ありがとう(^^ゞポリポリ


<オープンモードからアベックモードに移行しました>

(グラタン)はいった?
(ひめ)これでいいのですか?
(グラタン)うん、二人だけで誰もはいれない。読んだ?メール(笑)
(ひめ)読ませていただきました。
(グラタン)会ってくれる?
(ひめ)奥様にお断りになりましたか?
(グラタン)ちゃんとしたよ(笑)
(ひめ)本当ですか?
(グラタン)東京でチャット友達と会うって
(ひめ)女性だと言われましたか?
(グラタン)どうせ、女性でしょうと言われた(笑)
(ひめ)とても、奥様に悪いと思います。
(グラタン)悪くないよ、友達として会うのだから
(ひめ)昨日、代表がここに来まして話合いがありまして
(グラタン)うん
(ひめ)私は当分の間りんと一緒に行動する事になったのです。
(グラタン)山梨?
(ひめ)しばらくの間東京には戻れないみたいです。
(グラタン)東京以外は?
(ひめ)はい、山梨と静岡です。
(グラタン)静岡で会えない?
(ひめ)代表から居場所は誰にも教えてはいけないと言われました。
(グラタン)今の場所以外で会えば問題ない
(ひめ)グラタンさんが思ってるような子では私はありません。
(グラタン)場所はどこでもいいよ
(ひめ)りんも一緒には来てくれないと言ってますし。
(グラタン)二人で会うのはいやなの?
(ひめ)いやと言うのではないのですが・・
(グラタン)りんの了解、もらってる
(ひめ)りんが良いといったのですか?
(グラタン)うん、メールで干渉しないって
(ひめ)メールをグラタンさんに?
(グラタン)うん、知らなかった?
(ひめ)何故ですか?
(グラタン)だって、りんに僕が会いたがってるって話したんでしょう?
(ひめ)はい。でも何故メールを書いたかわかりません。
(グラタン)小説の感想のついでだよ
(ひめ)わかりました、りんに聞いてみます
(グラタン)ひめは僕にあいたくないの?
(ひめ)とてもこわいです。初めての方と一人で会うのは。
(グラタン)僕たち・・はじめてじゃないよ。何度もチャットで会ってる
(ひめ)そうですが・・・
(グラタン)お互い、判ってる部分があって、もっと知る為に会いたい・・
(ひめ)このごろ私の知らない事が多いみたいで気になります。
(グラタン)気にしないのがひめだよ、おおらかに(笑)
(ひめ)昨日の代表もなにか変でしたし・・・
(グラタン)工房のことは判らないけど・・
(ひめ)私がチャットをやる事で御迷惑かけているみたいですね・・・。
(グラタン)どうして・・ひめに会えて幸せと思ってるよ
(ひめ)私は優柔不断で皆さんに御迷惑かけています。
(グラタン)いや、そんなことはない。ひめはやさしんだよ
(ひめ)いいえ、優しくありません。
(グラタン)気楽に会って欲しい
(ひめ)考えさせていただけますか。
(グラタン)うん、ごめん、困らせたみたいで・・
(ひめ)ごめんなさいでも同じ女性としても奥様にも悪いと思いますし・・・。
(グラタン)ひめに・・気持ち知って欲しかったから片想い宣言したしね
(ひめ)こちらでも、少し気になる事がありまして。
(グラタン)そうなの?
(ひめ)ごめんなさい、詳しくは言えませんが・・、
(グラタン)僕と会うかどうかには関係ないことでしょう?
(ひめ)まったく無関係でもないんです
(グラタン)それなら話して
(ひめ)りんには話してないのですが
(グラタン)うん
(ひめ)奥様がいらっしゃる方の奥様から電話で・・
(グラタン)うん
(ひめ)ごめんなさい、これ以上は、ほんとうにごめんなさい。
(グラタン)判った・・聞かないよ
(ひめ)たぶん、代表もその事で来たと思います
(グラタン)その奥さんの件で?
(ひめ)たぶん。りんに聞いてみようかと思っています。
(グラタン)ひめは好きな人がいるの?
(ひめ)いいえ、今は絵に集中したいものでいません。
(グラタン)よかった(笑)
(ひめ)去年まではお付き合いしていましたが、ふられました。
(グラタン)ひめが振られた?
(ひめ)はい、絵ばかりでしたから・・。
(グラタン)ひめが好きになったんだから素敵な相手だろうけど・・
(ひめ)大分時間が過ぎてしまいました、この辺でよろしいですか?
(グラタン)また会ってくれる?
(ひめ)お返事は必ずいたします。
(グラタン)いい返事を待ってる(笑)
(ひめ)ごめんなさい、本当にもういかなくてはいけません。
(グラタン)またね(^.^)/~~~>ひめサン


 ひめの失恋は何となく推測していた。だからりんは気分転換にチャットを勧め、アイビスを相手に選んでいたのだろう。ただ、ひめはりんが気づかない間に僕と知り合って親しくなった。
 ひめに会いたい気持ちは強いが、ひめを苦しめている問題を何とかしたかった。ひめは画廊のオーナーが工房に乗り込んできた事を知らないし、りんはその奥さんからひめに電話があった事を知らない。
 ひめの苦しみを癒す為には事実を知る必要がある。ただ、僕はりんからひめには話さないように言われている。
 僕はりん宛にメールを書いた。お互いに気を使い過ぎて問題を複雑にしているんじゃないか?ひめにすべてを話したほうがいいと。