「恐怖のラウンジ11」

 tea−cupのチャットのチャットルームは初心者用、地域限定、年齢限定、テーマ限定など分かれているが、何処も常連組が陣取っている。我々チャット応用研究会連合はIPを確認されて追い出されるのが常である。俺は荒らしではない。彼らはゲームとしてのチャット荒らしを楽しんでいるが、俺は実用派だ。現実社会ではナンパ師と呼ばれるらしいが、あれは元手と修行が必要。チャットのナンパ師登録NO.13こそ俺の本当の正体なのだ。
 仕事場はIPが出ないラウンジ。1日1殺ではなく、1ナンパを目指して励んでいる。成功率は・・秘密である。


 ネット管理者は基本的にチャットを利用者の自己責任として不介入だ。それをいいことに一部の荒らしが勝手放題にやっている。俺のような良心的利用者にとっては腹立たしい状況である。
 
ネットの噂は電波より速い。闇の法廷ラウンジ11、そこでは悪魔が覗いて笛を拭く・・いまだそこから出てチャットした者なし。我が応用研究会連合は冗談として受け止めた。健全ナンパ派の俺も・・

さゆり>また、変な所に誘う気でしょう?
狩人>オフ・コース(^_-)

 この時、俺はオフコースの歌詞を打とうとしたが、突然フリーズしてけばけばしい画面に変わり、画面横に枠が現れ、醜悪な天使が静止画像で写った。頭上のリング、しわくちゃな白衣、羽根はその太った体を一層目だたせた・・

正体不明の裁判官>ようこそ、ラウンジ11へ。罪を認めますか?
狩人>何の罪だよ!
正体不明の裁判官>法廷侮辱罪で、有罪。プロバイダー通知によるID停止
狩人>待てよ、おばさん
正体不明の裁判官>おばさんですって!裁判官侮辱罪で死刑!
狩人>ふざけるな!ネットで人を死刑に出来るか、潰れたイルカが・・
正体不明の裁判官>甘い、出来るのだ。詳しくは「仮面舞踏会」参照。潰れたイルカとは?
狩人>春がきて〜君は〜綺麗に〜なった♪去年より〜ずっと〜♪
正体不明の裁判官>音痴め・・うん?こっこの野郎!天使に向かって、何たる侮辱!
狩人>噂では悪魔って聞いたぜ。
正体不明の裁判官>裁判官だから、黒のコスチュームにしたのよ。そしたらそういう噂になって・・・・
狩人>黒白関係なし!天使でも悪魔でも美人は美人、ブスはブス!
正体不明の裁判官>事情確認の必要ないわな・・あんた、セクハラの罪で起訴されたんよ
狩人>俺が?チャットのフェミニスト、ネットの紳士である俺が?
正体不明の裁判官>身に覚えがないと言うの?
狩人>ありすぎて・・どれのことやら・・
正体不明の裁判官>告発状その1:被告はうら若き美女がしとやかにチャットで微笑んだ時・・・
狩人>自己申告だと表現自由なわけね・・
正体不明の裁判官>大口あけて馬鹿笑いするから小皺が大皺になってるとほざいた
狩人>うーーん、数回使った親睦用のパターンだな・・
正体不明の裁判官>告発状:その2:被告は21から50歳までの女性しかナンパしないと公言した、これは重大なる年令差別である
狩人>「つぼみ」だな。だって彼女が51歳とは知らなかったんだよ・・・
正体不明の裁判官>まだまだあるが・・私も忙しい。とにかく現行犯逮捕で片づけよう
狩人>現行犯って・・・それは身に覚えがないぞ
正体不明の裁判官>裁判官告発:被告は女性を変な所に誘おうとした。これは公共の場であるネットで許されぬ発言であり・・
狩人>奴は、ネカマだぜ
正体不明の裁判官>ID検索・しまった、男性を変な所に誘おうとに訂正。変な所ってどこだ?
狩人>なりきり部屋だよ、金曜はエルフ部屋になる
正体不明の裁判官>あ、あの18禁ソフトの登場人物に紛する部屋か。覗いたが、じゃ、あの時いた女性ハンドルは・・
狩人>女性があんなソフト、知るわけないだろ。女役も男がやる、歌舞伎の世界さ。
正体不明の裁判官>ちょっと、吐き気が・・
狩人>じゃ、これで無罪放免だな。元のラウンジに戻してくれよ
正体不明の裁判官>そうはいかない・・私にもノルマがあるのだ
狩人>ノルマ?
正体不明の裁判官>月に1人は有罪にしないと、裁判官を首になる。これやってると、通信料は使い放題、タダの特典がある。この差は大きい。
狩人>そんなの、自分の都合じゃん
正体不明の裁判官>とにかく・・今月は急ぎの仕事もある。今から他の容疑者探すのは面倒だから・・告発状と裁判官侮辱内容で、倍課の刑で手を打とう。
狩人>倍課の刑とは?
正体不明の裁判官>電話代と接続料が2倍になる
狩人>出て、チャットする者なし・・そりゃそうだわな・・
正体不明の裁判官>では、請求は来月からという事で閉廷!
狩人>待てい、グイン・サーガ83巻、外伝12巻
正体不明の裁判官>なぬ?
狩人>魔界水滸伝も、SF短編集もほとんど読んでる愛読者にそんな仕打ちをするか?通信料が上がれば、本は買えなくなるなぁ
正体明白の裁判官>すると、私の収入減・・ムム・・いつ私の正体に気付いた・・
狩人>仮面舞踏会でね・・前にクイズ番組にレギュラー出演してただろう。中島梓こと栗本薫、そして、その本名は・・・
正体ばれた裁判官>言うなぁ、それは秘密なのだぁ!
狩人>だよな・・だから知らない。教えてよーー
正体明白の裁判官>ああ、ドキッとした・・しかし、困ったな。生活安定は必要だ。全作品読まれてるとなると・・特に推理物はこれから増えるし・・
狩人>あ、もうこんな時間だ・・
正体明白の裁判官>なんせ、ぼくらの時代がデビューで、伊集院大介とか、書きまくったもんね。それを全部読んでもらってるなんて・・貴重なファンだしね・・
狩人>珍しい・・雨音だ。雨音はショパンの調べ・・
正体明白の裁判官>SFだけで、私のファンなんて、恐れ多くて言えない筈だし・・HPでのカキコもメールも記録にないが・・
狩人>お許しくだせえ、天使様。推理とホラーは苦手で・・
正体明白の裁判官>ならぬ、ならぬ、の奈良漬茶漬け
狩人>大天才作家、文壇のバラ、奇跡のクリエーター、全国男性の憧れの的!
正体明白の裁判官>さっき、ブスって言ったじゃん
狩人>美人は美人、ブスはブスって言ったんだよ。イルカは憧れの歌手だしそれが一回り広いなんて、超美人!
正体明白の裁判官>どうも、抵抗あるなぁ・・ちなみに文壇の別の美人をあげよ
狩人>田辺聖子
正体明白の裁判官>歌手では?
狩人>研ナオコ
正体明白の裁判官>うーーん、タレントでは?
狩人>泉ピン子
正体明白の裁判官>通信向きの男だな・・特別減刑で、1年間のチャットルーム追放にしとくか。今後、お前のマシンではアクセス不能となる
狩人>待ってくれ!今、口説き中の女性が10人以上いるんだ
正体明白の裁判官>どうせ、見込みないんだろう
狩人>今はな、みんな彼氏がいるし、じっとチャンスを待つんだ。
正体明白の裁判官>チャンスとは?
狩人>振られたての女ぐらい〜落としやすいものはないんだってね〜♪
正体明白の裁判官>中島みゆきできたか・・振られるとは限らないだろう
狩人>だから、100人唾つけとけば、確率で2、3人はチャンスあるだろ
正体明白の裁判官>永久追放がいいのかもしれないな。では、そういう事で バイッチャ
狩人>あ、そんな殺生な!

 ラウンジ11の恐怖は、経験したものにしか判らない。悪魔姿の彼女を見た連中は、地獄に行きたくないと真面目な生活してるだろうし、天使姿を見た俺は、天国行きを諦めた。もしかして次はセーラー服姿の彼女に会うかもしれないと思うと・・うかつにジョークも発言出来ない。だが、ついに、ティーカップから恐るべきメールが届いた。

「厳正なる写真審査の結果、女性対応のラウンジ12担当にあなたが選ばれました」

 うるせえ!いかりや長介かそのまんま東にしろ!!
   
END