男に騙され、捨てられた。残されたのは一生かかっても返せない借金だけ。男は私を嘲笑しながらその金で他の女と遊んでいる。会社も懲戒免職になった。もう、私の選べる道は一つしかない。酒を飲み、風呂に入って手首を切った。

 死の瞬間に走馬燈のように想い出が甦る。あの男の一挙一足が浮かぶ。最初から男はこうなる事を狙っていたのだ。恋に目がくらんでいたが、今なら解る。許せない、男がのうのうと生きているなんて許せない!

 「お前には新しい生命が用意されている。終わったことは忘れるんだ。」
 
「死んで、私にまた新しい人生があるというの?」

 「人間としては生きられぬ。お前は次に虫となる。」
 
「虫ですって?イヤよ、生まれ変わってあの男に復讐するのよ!」
 「怨念が消えぬとは・・しかし輪廻は変えられぬ。」

 男は女と中央高速をポルシェで走っていた。高級レストランと一流ホテルを既に予約している。すべてが順調だ。自殺した昔の女など記憶の欠片も残っていなかった。緩やかなカーブで突然目に痛みが走った。思わず両手で目を押さえる。

 車はコントロールを失い、ガードレールに衝突した。男は即死だったが、眼球を刺した蚊に昔の女の憎しみを見た。