ハナ差だったんだよ、高橋。
 本命のグダヤマトがハナ差で3着に落ちなければ、お前に300万返して使い込みの500万も穴埋めが出来た。
 あのハナ差で俺は親友のお前を、こんな山奥に埋めなければならなくなった。
 ハナ差だったんだ・・恨むならあの馬鹿な騎手を恨んでくれ・・


 携帯が鳴り、車を止めた。家からだ。仕事で遅くなると言っていたのだが・・

 「なんだ?仕事中だぞ」
 「山本さん?うちの主人は?」
 体が硬直した。高橋の奥さんだ。高橋を絞め殺した時に携帯が転がり落ちて拾ったが、高橋の携帯だったんだ。すると俺の携帯は?

 「電話を変わったわ。あなた、高橋さんの通帳から300万が落とされていて、奥さんが問い詰めたらあなたに相談するから待てと言われたそうなの。それで奥さんがうちにいらっしゃてるんだけど、どういう事?」
 「帰って説明するよ。奥さんと一緒に待っててくれ」

 今日、俺と高橋が会った事は秘密だ。疑われる要素はすべて抹殺しなければ清算出来ない。高橋の奥さんと妻、場合によっては娘も・・

 そうだ、妻の保険金で清算が出来る。保険金が下りるまで、また500万を使い込んでダービーで勝負しよう。今度は絶対大丈夫だ。


 車を走らせながら、首を締める紐を確かめた。