青い空、白い雲、太陽・・高良山中腹の野原。
  陽子が裸の上半身を起して、横で寝転んでる俺の顔を覗き込んだ。
 「優しくしてって言ったのに・・」
 拗ねて唇を尖らせる。
 「俺も初めてなんだ、余裕ねぇよ」
 手を伸ばして陽子を引き寄せた。


 俺と陽子は高校2年の同級生。ありふれた片想いだったが、授業中に強引に引っ張り出し、バイクでここに連れてきた。告白、初キス、初セックス、学校を脱け出して1時間たっていない。
 「陽子さぁ、橘が好きだって噂、本当か?」
 「今は健一が好き・・それでいいでしょう?」
 「ああ・・」
 陽子にキスしようとした時、地面が揺れた。
 「始まった?」
 「かもな」
 起き上がり、裸のまま陽子と見晴らしのいい場所に移動した。火の手が上がり荒れた街の様子が見渡せた。
 「波だ・・」
 海は遠いのに、波が押し寄せてくる。空を見上げた。霧がかかったようにもう青い空も雲も、太陽も見えない。
 「二回戦といくか・・」
 「今度こそ・・優しくね」
 陽子を草の上に寝かせ、重なった。


 回数は知らない、何万回目かの核実験が海底火山の噴火とぶつかった。死の灰は空を舞い、気流に乗って世界を覆う。火山はマグマ層まで突き破られて海底から地底まで蜘蛛の糸のように広がった細胞を破裂させていった。


 「パニックになるのが一番危険だ。指示に従い、規律正しく行動するように」
 首相が対策委員会を設置したという緊急放送の後、担任教師の話の途中で陽子を引っ張りだした。地球は滅びる。それなら、一番やりたい事をやって何が悪い。


 「死ぬってさ・・どういう事なんだろうね」
 抱かれながら、陽子が呟いた。
 「知らね・・経験した事ないからな」
 「でも、みんな一緒に死ぬんだし・・健一と愛し合いながら・・結構幸せかもね」
 「ああ、陽子を抱いて死ねるなんて最高さ」
 俺と陽子の体に灰が薄く積もる。地面の揺れは激しくなり、波の音が近づいていた。どれで死ぬかは問題じゃない。どっちみち苦しむ時間もないだろう。
 「ありがとう・・健一」


 死の瞬間、抱きしめていた陽子の声が聞こえた・・