| まだ早朝で通る人は少ない。俺は並木道のベンチに腰かけて待った。 今朝、彼女は必ずここを通る。運命の出会いが今から起きるのだ。 俺は誰もが振り返る美形で、アインシュタインの相対性理論を中学の時に理解する頭脳を持っている。ないのは釣り合う女性だったが、テレビのCMで一目惚れした。 彼女とは生まれた年が違いすぎ、既に急性白血病で亡くなっている。凡人なら諦めるだろうが、天才に不可能はない。10年間、寝食を忘れてタイムマシンを発明した。 計画は万全でなければならない。ロリコンじゃないから、若すぎる彼女を口説く気はないし、彼氏がいたり、変な作家と結婚した後じゃどうしょうもない。彼女の日記を調べて、デビュー前の18歳、何もなかった日の早朝に出会う事にした。俺は三十歳になってしまったが、彼女は年上好みだし、大丈夫だろう。俺に惚れない女なんていない筈だ。 問題は、むしろその後にある。彼女をタイムマシンで現在に連れてきて病気にならないようにするか、俺がこの時代に生きて治す薬を発明するかだ。彼女と一緒なら、どっちでもいい。 道の向うから彼女が現われた。俺は花束を持って立ち上がった。目が合い、彼女は微笑んだ。 「おじいさん、何か祝い事なの?」 「え・・」 「長生きしてね」 そのまま日記にも残らない出会いは終わり、彼女は遠ざかっていった。 俺は、止まってる車のバックミラーで自分の顔を見た。白髪に皺・・老人の顔だ。相対性理論で過去に行く場合の影響は・・40年移動すれば、それだけ歳を取るのか・・ 元の時代に戻れば、110歳になってしまう・・ 俺は天才だ、こんな事では挫けない。若返りの薬を発明すればいい。しかし、10年以上はかかるし、その間に夏目雅子は死んでしまう。天才にも不可能があった・・ |